ほしあかりのよる

 アグロヴァルと政略結婚した妻

暗闇の中でしか言えなかったの

政略結婚当初の氷河期の話。夢主の短い独白。
タイトルはこちらからお借りしました。
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 1人きりの寝台は広く冷たく、暗く。
熱さに凍えそうな心を鎮める術を、わたくしは知らないのです。

 意思など持たない方が良かったのでしょう。
 婚礼の日、あなたはわたくしにおっしゃいました。……いいえ、言われたわけではありませんけれど。あなたの決してぶれない歩みは、わたくしをエスコートする強い手は、厳しく前を見据える表情は、確かにそうおっしゃっていました。
 妃としての役割を果たすため、わたくし自身の意思など不要、と。

 だというのに、あなたが愛おしいと思うわたくしの意思を、わたくしは止められなかったのです。
 聞けば、あなたは愚かと嗤うでしょうか。
 それとも、伝えてしまえば何かが変わるのでしょうか。

 すぐに伝えてしまえるほどわたくしは強くはなく、
 かといって伝えなければ生きていけないほど弱いということもないでしょう。

 だから。

「愛して、います――……」

 暗闇の中でしか言えなかったの。