自信たっぷり / 純銀 / 素直な言葉
ワードパレットでやってみたもの。
遠恋中の夢主の独白です(なので名前変換ありません)。
ねえ、初めて会った時のこと、覚えてる?
レオくんが入院してて、私がレオくんのお見舞いに行った時だったね。まだ結構寒かったけど、レオくんたら病室の窓全開にしてたんだよね、空気が悪くて気が滅入る!って。肌寒かったけど、日差しは春っぽくなってきてて暖かかったの、覚えてる。それで、レオくんがせがむからアイネ・クライネ・ナハトムジークのバイオリンパートをちょっとだけ弾いたんだよね。あの頃、泉くんとレオくんにとってこの曲が特別だなんて知らなかったから、モーツァルト嫌いなレオくんが喜んでくれたのが意外だったなあ。あの曲だったの、ほんとに偶然なんだよ。次の演奏会の演目だったから、ちょうどたまたま練習してた曲だった、っていうだけ。
そういえばあの時の泉くんの感想、聞いてないかも。……初対面のあの場でいきなり感想なんて聞けなかったから、今でも覚えてくれてるなら、聞いてみたいな。
泉くん、顔と名前はレオくんからよく聞いてて知ってたけど、実物見た時、思ってたより背高いんだなとか、思ってたより、なんていうんだろ、細くないというか、華奢じゃないというか。そんな印象だったんだよね。それもそうだよね、あれだけ歌って踊ってるんだもん。華奢なはずないよね。それで――そう、初対面の泉くん、かっこいい人だなって思ったの。モデルだもん、顔が整ってる、っていうのは確かにあるんだけど……うち、アイドル科あったからそういう意味ではかっこいい人ってすごくたくさんいたじゃない? そういう中で、見た目の部分を差し引いても、私は泉くんのことかっこいい人って思ったんだよ。自信たっぷりで、言葉にも行動にも芯が通っていて、大切な人のことを大切にしようとする、かっこいい人だなって。
それからもいろんなことがあったよね。Knightsとして再出発して、レオくんが学校に復帰して、でもうまくいかないこともいっぱいあって。私一応レオくんの幼馴染っていう自覚はあるから、レオくんのこと大事なんだけど、科も違うし四六時中気にかけることもできなくて。同じようにレオくんを大切に思ってくれてる泉くんがいてくれたの、すごく心強かったよ。それで……なんで私達よく話すようになったんだっけ。ああ、レオくんいつもいなくなるもんね。携帯も繋がらないし。泉くん、よくレオくん探してたから、私にもレオくんの居場所聞いてくるようになったんだった。練習室にもたくさん来てくれたよね。ほとんど、レオくん探しの一環ではあったんだと思うけど……いつからだろうね、泉くんが「れおくんそっちいない?」って電話とかメッセージくれるのとか、「あいつ、ここにもいない……!」って言いながら私の練習室に来てくれたの、とっても、とっても嬉しかったの。あとあの……これ私の勘違いだったら申し訳ないんだけど、多分、冬前くらいからかな。用がなくてもよく連絡とかくれるようになったじゃない? あれって、あれって私、うぬぼれてもいいやつだったのかな……? 私も泉くんと会ったり話したり、もっとしたいと思ってたから……私も用がなくてもたくさん連絡しちゃったなって思ってるんだけど、その、嫌じゃなかった、ってことで、いいんだよね……?
こんな話したことないけど、私、泉くんのこと好きだなって自覚したの、多分そのころなの。ハロウィン終わって、スターライトフェスティバルの準備でみんなが忙しくなるくらいの時期だったと思う。ねえ、そんな中で観たスタフェスでのKnightsのライブ、私どうにかなっちゃうかと思った。もともとKnightsは好きだよ。だけどあの時、……好きって自覚したタイミングだったっていうのもあるんだけど、あの時の泉くん、眩しくてきれいで信じられないくらいかっこよくて、心臓おかしくなりそうだった。Knightsのカラーって紺だし、泉くんのカラーも水色とか、グレーだと思うんだけど、あの時の泉くんはきれいな銀色に輝いてるように見えた。混じり気のない純銀みたいな、強くて、美しくて、明るいキラキラした光だった。……こんなこと、泉くんの前じゃ恥ずかしくて絶対言えない。でも、あの時の私にはあの時の泉くんがそう見えたの。私の好きな人、こんなにもきれいに光り輝く人なんだ、って。
もちろん今でもそうだよ。泉くんはいつだって輝いてる。返礼祭の後、好きって言ってくれて、私も、……正直泣きすぎててあんまり覚えてないんだけど、好きって伝えて、そこで少しは泉くんに近づけたのかな。レオくんの友達とか、アイドル科のアイドルでモデルとか、お互いの間にひとつ線引きがされていたものがなくなって、直接触れられるようになった、っていうのか、そんな感じ。そうなってからは、泉くんのきれいな光は全然変わらないんだけど、なんて言ったらいいんだろう。ちょっと、その光が優しくなったような。これ多分私の見方が変わったからってだけかな。
……。
……あの、返礼祭のあとの練習室で告白してくれた時のこと、恥ずかしすぎて未だに思い出すの無理なんだけど……もちろん嬉しかったしすごく幸せなんだけど、だってあの時、私意味わからないくらい泣いてたじゃない? それに泉くん、いつもと違って思ったことそのまま全部言ってくれたから……こんなこと言ったらきっと照れながら憤慨すると思うんだけど、あの時の泉くん、今までに聞いたことないくらい素直というか、ストレートな言葉たくさんくれたよね。余裕なかったってことなのかな。それだけ私のこと考えてくれてたんだって、思ってもいい? 私も泣きすぎてて全然余裕なくて何も考えられなくて、頭に浮かんだ言葉をそのまま口に出しちゃって……多分、好きとか大好きとか、そういうことひたすら言ってたと思う。どうしよう恥ずかしすぎ……私自身の記憶があやふやで何口走ったかすごく気になるんだけど、これもやっぱり泉くんには一生聞けないと思う。辛いわけじゃなくて、むしろ幸せで感極まっちゃって、泉くんが好きって言ってくれて、私も多分必死でそれに答えて、そうしてたら抱き寄せてくれた泉くんのぬくもりとか、心臓の鼓動とか……全体の記憶は曖昧なのに、そういうところはすごく鮮明に覚えてる。
なにこれやっぱり恥ずかしい! こんなこと考えたり、思い出したりしちゃったのもきっとなかなか会えないせいだよね。寂しくないって言ったら嘘になるけど、お互いの夢に向かって進んでいるところだもん、納得してるし、お互い無理して一緒にいるのも、どこかでだめになるってわかってる。だから――だからたまにこうやって、泉くんとのこと思い出すんだろうな。
――会いたいなあ、泉くん。泉くんも、そう思ってくれてたらいいな。