Die Blaue Nacht

③ミヒャエル・カイザーが「俺のマリア」を手に入れるまで

ストーリーのあらすじ。
この設定・ストーリーの延長線上の短編を断片的に書いています。
構想メモみたいなものをそのまま載せているので、今後変わる可能性もありますし、まだ固まりきっていない部分もあります。

 ”聖女”に対する、自分にとっての救世主を手放したくない、他のところへ行ってほしくない、汚れた自分の側にいて照らしてほしい、いつまでも汚れずにいてほしい、汚れないように自分が守りたい……というある意味独りよがりだけどストイック(?)な”愛”のような感情と、
 ”完璧ではない存在にんげん”に対する、自分と違って何不自由なく育ってきた名前への嫉妬と憧憬、聖女ではないならいっそもっと汚れてしまえ、汚してしまいたい、むしろ聖女であるなら汚してしまえば自分だけのものになるし、聖女を取り込む/一つになることで少しは綺麗なものになれる、そもそも俺を求めろ……というもっとドロドロとした執着と欲望を向けるようになるカイザー。
 名前はというと、彼女は彼女で広義での”刺激”が嬉しいというか、生きている実感を持てるので、カイザーから向けられるいろいろな感情を相変わらず受け入れてしまいます。何かを求める、というのがわからない(欠落というか押し込めた結果無くしている)のが名前で、いつまで経ってもただ受け入れるだけで求めるということをしなくて、受け入れることでいろんな感情を得て人間になろうとしているのですが、「求めない」のでカイザーからは更に「求められる」ようになります。そしてそれが名前は嬉しいという…悪循環…
 もはやどちらが救われて、どちらが引き摺り込まれたのかもお互いにわからないまま、恋愛感情から付き合っているわけでもないけど離れ難い、恋心はないけど抱いて/抱かれているというよくわからない関係に。
 幾度も体を重ねるうち、「全て自分に委ねてくれている」という多幸感?と独占欲が満たされるのを感じつつ、「俺と同じものを見せたい」「もっと委ねられたい」が子ども時代の記憶と重なって歪んで、ふいに名前の首を絞めてしまったカイザー。なんかもうゾクゾクして最高で意味わからないほど良くて…翌朝死ぬほど自己嫌悪するんですけど、やっぱりあのゾクゾク感が忘れられないし、名前も”すごく刺激的だった”ので受け入れてしまって、結局この歪な関係がさらに続くことになります。それに彼にとって暴力や暴言は”人間らしい”行動そのものだったりするので……

そんな歪んだ関係を続けるうち、カイザーによって満たされて感情や人間性を獲得した名前は人形から人間になり、人形だった名前を人間にしたカイザーもまた、自身も人間であると自覚していく話です。