Die Blaue Nacht

耽溺

18歳未満の方は閲覧禁止です。
直接的な描写はないですが若干暴力的だったり致してたりするのでR-18としています。
お互い執着しているけど、まだその先にあるものは見えてない時期だし夢主の方はまだあんまり自我がないです。夢主視点なので名前変換はありません。
夢主のことを神聖視して「俺のマリア」と呼びながら、自分と同じところまで堕ちてこいとも思っている時点のカイザー。

 ――私にこんな感情を向けるのはあなただけ。
 ――知らない、知らない、こんなのあなたに出会うまで知らなかった……身体も心も一つになって、あなたの心も全て見えてしまうような、そんな感覚、なんて。

* * *

 惹き合うように口づけ合った。
 奪い合うように口づけ合った。
 せっかく満たしてもらえたものを奪われるのは嫌だったから、奪い返そうとしてさらに口づけ合った。

 身体全部でのしかかられて、シーツの海に思い切り縫い止められる。空気が胸から押し出され、それすらも奪われて眩暈がした。身体も心も縫い止められて、身じろぐことすらできなくて、全身全霊で彼を受け止めた。――なんて、すごい、感覚刺激
 強く掴まれた手首には、きっと跡が残るだろう。痛みすら生きている証に感じられて、それを与えてくれる彼を離したくなくて仕方がない。だけど彼を繋ぎ止めるための腕は動かせなくて、代わりに全身を彼に押し付けた。

 全身で繋がって奪い合って求め合って、息ができない。苦しくて全身が強ばるような圧倒的な感覚に飲み込まれそうになって、目の奥がチカチカと瞬いた。思わず顔を背けて彼の唇から逃れてしまう。思い切り息を吸って、新鮮な空気を取り込んだと思ったら、手首を掴んでいた彼の右手が粗野な動きで顎を掴む。正面を向かされて、また口づけが降ってきた。
 ――束の間見えた彼の、苦しそうで欲に塗れたあの歪んだ顔が、最高で、たまらない。あの獰猛な肉食獣のような瞳にゾクゾクする。その彼が見ている私の瞳は、食い荒らされる草食動物のそれなのだろうか。それとも彼と同じで獰猛な目をしているんだろうか。知りたい?知りたくない?自分でももう、わからない。
 ……だから、受け入れて、ひたすらしがみつくことしかできなかった。彼はもっと求めろっていうけど、私にはそれがわからないから。

 一度嵐が過ぎ去った後、今度は背中から覆い被さる彼の重みをまた受け止める。キスの代わりとでも言うように、まだ足りないとでも言うように、肩口に歯を立てられた。それから、肩甲骨のあたりにも。
 私が彼を「天使」と呼ぶようになってから、殊更に彼はそこに噛み付くようになった。天使はあなたの方なのに。それをわかっているのかいないのか、彼はそのまま小さく「俺の、マリア」と私を呼んだ。私、マリア様なんかじゃないのだけど。でもそんなことは今どうでもいい。噛みつかれて、欲望と焦燥を煮詰めた声で呼ばれて、ぞくりと全身が粟立った。
 同じタイミングで、小さく舌打ちをした彼にぐいと体を引き起こされる。振り向きざまにまた顎を掴まれて、当然のようにまた唇を合わせた。薔薇を彫り込んだ彼の腕が、締め上げるように身体に絡みつく。顎に添えられていた手が首に移動して、脈打つ血管を強くなぞられた。
 
 言葉も呼吸も全部奪って、「あなたが欲しい」だなんて言わせないで。何も考えさせないで。
 今を生きるていることだけ、感じさせて。