Die Blaue Nacht

カイザーの好きなタイプについて

カイザーのプロフィールにある「好きなタイプ」についての話。
名前変換はありません。
カイザーの思考を捏造しただけの話です。短い。

※カイザーが女嫌いだという体です
※女優さんとか、芸能界に関わってる女性たちをまとめてひとくくりに嫌ったりdisったりするカイザーがいますが、あくまで彼が”狭い”世界での経験則に基づいて言ってるだけです、(念のためですが)諸々誤解なきようお願いいたします。

「綺麗で頭が良くて……ああ、もちろん愛情深い方がいいよな」

 好きなタイプは? どういう人がいいと思う?
 ――何かと聞かれることも多い質問ではあるが、ミヒャエル・カイザーはいつでもそう答えていた。「ミヒャエル・カイザー」というブランドとしてふさわしい回答だったからだ。
 ただし、恋人……というか愛人の一人や二人いてもおかしくないような派手な外見をして、それなりの暮らしをしているくせに、カイザーには女の影が全くない。そういうゴシップが出回ることはたまにあるが、すぐに完膚なきまでに否定される。というのも、誰に言ったこともなかったから知る者などいないが、彼は女が嫌いだからだ(彼の生い立ちからすれば当然ではある)。そして誰に言ったこともなかったから、周りは勝手に「あのミヒャエル・カイザーのお眼鏡に適う女などそうそういない」と思っていて、それがまた彼というブランドを強化している。自身のブランディングと女避けができてまさに一石二鳥だった。

* * *

 「綺麗で頭が良くて、愛情深い人」――そう言っておけば大抵は勝手に諦めるか勝手に納得して何もしてこない。「愛情深い」の基準こそ人それぞれだが、「綺麗」「頭が良い」はそれなりにハードルの高い要求だからだ。
 しかし、そのハードルを易々と超えてくる輩もいる。大抵が女優崩れやぽっと出のモデルやデビューしたてのミュージシャンもどきといった女だった。顔が良い自覚があって、男女の駆け引きが上手いことを「頭が良い」と捉えるおめでたい頭の奴らで、つまりはカイザーがクソほど嫌っている人種でもあった。
 言い寄られたり、上手くカメラとタイミングを使われてそれらしい写真を撮られることもたまにあるが、カイザーはその度にそれはそれは美しい嘲笑と容赦のない舌鋒でもってそれを迎え撃った。反撃された――完膚なきまでに振られた――相手からすればプライドをへし折られるやら、ゴシップをでっち上げたという不名誉な功績を残すやらで、精神的にも、そして時にはキャリアにも傷を残すことになるのだが、まあそれだってカイザーにしてみればある種の楽しみではあった。むしろこの俺に構ってもらえる傷つけてもらえるのだから感謝しろよ、とすら思っている。

 そして、ひとしきり嘲笑して傷つけてやったあとには、怒りにも憐れみにも似たもやもやとした薄暗い感情がやってくる。
 一時の感情で誰かを愛した気になって子どもなんて作っておいて、一時の感情でその子どもを捨てるような、感情で生きているような女はいらない。一時の燃えるような感情があったとして、それだけで「愛情深い」なんて錯覚するような奴もいらない。頭の良い理性的な女がいい、と。

* * *

「好きなタイプ? クソくだらねえことを飽きもせず聞くもんだ。よーく知ってるだろ?」
「で? 俺がいつ、そういう女を求めてる、なんて言ったんだ?」
 
 誰かが傷つく顔が見たくて(自分の中の何かを納得させたくて)、今日も彼はインタビューに答えている。ブルーロックにやってきた時に記入するよう言われたプロフィールにも同じ設問があって少し笑ってしまった。世界中どこでも所詮は同じなんだな、と思いながら。