140字SS集
140字お題メーカーさまのお題で書いたもの。
短いですが、140字に収まっているものはありません。そのうち増えると思います。
短すぎて夢主の存在がないものもあります。
WunderlandとSpiegellandの時空が混ざっています。
愛してる、って言ったら満足?
あいつが俺に「愛してる」って言ったとして……いや、そんな仮定クソ無意味にも程がある。だってあいつは、俺が言えと言えば躊躇いなく「愛してる」と言うだろう。
俺が求めているのは、そんなものじゃない。
そんなものじゃなくて――クソ、じゃあ俺はあいつに何を求めてるっていうんだ。
(138字)
ふたりぼっち
ミヒャエル・カイザーは、一人でいれば存外に静かな男だった。ソファに身を預けて思考に沈んでいる。
同じように
名前・苗字もまた、ただただ静かな女だった。自我が弱いから存在も薄い。静寂に溶け込むような女だった。
窓辺で本を読んでいた名前が不意に立ち上がり、微かな風と共に彼の横を通り過ぎる。舞い落ちた木の葉を無意識に払うように、あるいは肌に触れた風を追うように、カイザーは通り過ぎようとする名前の手を掴んだ。
「ミヒャエル」
足を止めた名前が、どうしたのかと問うように名を紡いだ。それを聞いて裏腹に、カイザーは掴んでいた手を放り出す。興味を失ったと言わんばかりだった。
「別に。何でもない」
夕暮れ。最後に残っていた日の光が、部屋を滑り抜けて消えていった。
(342字)
時間よ止まれ
”時よ止まれ、汝は美しい”
世界がそんな風に見える人がいたなんて、俄かに信じがたい。ただ息を吸って吐いて、目を閉じて開いて、それを繰り返すだけの日々世界を切り取って永遠にしたいだなんて、わけがわからない。
鮮烈なメタリックブルーが私の世界を塗り潰すまでは、確かにそう思っていた。
(ルビなしで141字)
運命なんて、くそくらえ
運命だなんて、誰が信じるものか。
バスタード・ミュンヘンに出会ったのは運命だった、などと書かれた雑誌を、カイザーは乱暴にゴミ箱に投げ入れた。クソ親父も「クソ物」も「あのクソ退屈な女」も何もかも、このチームに出会うための必然だった?そんなわけあってたまるか。
運命なんてクソ喰らえ。彼を支配するのは、他でもない彼自身だった。
(164字)