風向きが変わった。
暁風は冷え冷えと吹きつけ、女の髪を乱す。
——もう、直ぐ。
女は白みゆく東の空を見つめ、弓を握る手に力を込めた。
後背に控えるは彼女を盟主と戴く一千騎。何れ劣らぬ強者揃いだ。
彼らは女が進軍の命を下すのを待ち構えている。一度彼女が号令を発すれば、彼らはたちどころに怨敵を討ち滅ぼす千騎の暴風となるだろう。
全てが息を止めるような一瞬。
そして一条の金色が、この日の最初の光が女を照らす。
女は光に向かって顔を上げた。光に向かい、いっそ傲然ともいえるその様は、まさに王たるにふさわしい覇気を纏っている。
瑞雲がたなびき、世界が動き出す。
払暁、覇業の刻は、いま。