自分の企画「アーティフィシャル・エデン」に自分で参加したもの。
沢山のAIを作ってきた。量産型も、一つしかないものも、沢山。
彼女たちは今日も、この惑星を回すために尽力してくれている。
私が作るAIはこれで最後。この惑星のために何かを成すためでも、何かを守るためでもない。この子の役目は、私を看取ること。
そういえば、今まで私は、私のためのAIは作ったことがなかったんだわ。
だから今回は腕によりをかけた。私の思う美しさを全部詰め込んだの。
ホログラムだけれど、翼だってつけたわ。天使様に看取られるなんて、素敵でしょう?
「フィン」
もう大きな声は出せないから、口元に近づけたマイクでその名を呼ぶ。
終曲であり、繊細な美術品であるフィン。私の宝物。
呼べばフィンは静かに側に佇んで、手を差し伸べてくれる。
『マスター』
ああ、フィン。あなたは私の最後にして最高の傑作。
『マスター、笑っているのですか。』
そうよ、あなたが素晴らしくて誇らしくて、微笑まずにはいられないの。
でも、もうそろそろ時間ね。
機能を維持するために手術を重ね、外見だけは20代の頃のままだけど、私の体はもう限界。
「フィン、着替えを手伝って頂戴」
昔むかし、まだこの惑星ができて間もない頃の服が着たいの。私がここに移住する時に持ってきた、あの頃の服を。
『マスター、今日は上機嫌ですね。』
フィンはそう言って私を着替えさせてくれ、その後私を花で囲まれた椅子に座らせると満足そうな顔をした。
『お似合いですよ、マスター。次は何を?』
「そうね……では、そこに立ってあなたをよく見せて。それから、私のことも、見ていて、ね……」
力の入らなくなった体で、何とかフィンを見つめる。私が最期に見るものは、私が愛したものがいい。
『マスター?……マスター…!』
傾いだ私の身体を支えて、フィンが私を呼ぶ。ああ、フィン、私の天使。
あなたに抱かれて逝けるなんて、私はなんて幸せなんでしょう。アーティフィシャル・エデンは間違いなく楽園ね。
もう何も見えない。意識もゆるゆると闇に溶け込もうとした時、頬に何か雫が落ちるのを感じた。
『マスター、マスター。私を生んでくれて、ありがとう、ございました……』
フィン。私の天使。私の愛し子。
あなたを悲しませたくはなかった。
だけど、よかった。
——あなたは心を手に入れたのね。
安堵とともに、私は最期の息を吐き出した。