Dream, Short

同調する心音

お題はこちらからお借りしました。→http://4minutes.web.fc2.com/

名前変換ありません。


 主旋律だけじゃ味気ないし、伴奏だけじゃ全体が見えない。
 人間関係に主旋律も伴奏もないけれど、どちらかだけじゃ成り立たないのは音楽と似てるいるんだなと、最近思う。

 私は背が高い方ではあると思う。
 でも紅郎くんの方がずっと高い。
 手も結構大きいと思うけど、紅郎くんの方がやっぱり大きい。
 目線の高さも違えば、歩幅も違う。目標だって、私はピアノだし、紅郎くんはアイドル。だから私たちが見ているものはいつも違っていて、でもそういう距離感が心地いい。紅郎くんもきっと、そう思ってくれてるんじゃないかな。そんな気がしてる。

 きっとそう。きっとわかってくれてる。いつもそう思ってしまうから、あまりたくさん言葉で伝えるってことを、私たちはしないけど。
 手が当たるのはきっとわざと。
 わざとではないけど、そういう気分の時はよく当たると思う。
 紅郎くんもそれをわかっていて、少し手が触れるとちょっとこっちを見て、微かに笑って手を握ってくれる。

 そういう顔、すごく好きだなって、私、言ったことあったっけ。

 そう思っていたら、少し手に力をいれていたみたいで、紅郎くんの大きくて硬い手のひらが、ぐっと強く握り返してくれた。
 意識すれば鼓動はいつもより早くなる。きっと紅郎くんもそう。でもそれが少しくらいずれていたっていい。
 ――右手のメロディと左手のアルペジオが、1小節ごとにぴたりと重なることを、私は知ってるから。


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