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not審神者。別れ話です。
かわいくて、愛おしい、僕の大切な恋人。
その人が、目に涙をいっぱいにためて僕に向き合っている。それを僕は、どこか遠くから見ているかのように、現実感を持てないままに見つめていた。
どこで間違えたのだろう。
「光忠さんのこと、大好きです」
それなら、どうして。(うん、わかっているんだよ、そんなこと、僕にも。)
「ありがとうございました」
間違えた、のではなくて。そう、どこかでわかってたんだ。
どんな形でだって、いつかはこうやってお別れしなきゃいけないことを。
僕はきちんと言葉を返せているのかな。
相変わらず現実感のない頭では、自分自身の言葉すら拾えない。ねえ、名前ちゃん、僕は今、どんな顔をしているんだろう?
最後に泣きながら笑って、名残惜しそうに背を向けて。でもその後は決して振り返らずに、名前ちゃんの後ろ姿がだんだんと小さくなっていく。
同じように、名前ちゃんの中で僕はだんだん小さくなって、きっといつかは忘れてしまうのかな。
そう思えば不意に視界がぼやけて、そこに、名前ちゃんの帰りを待ちながら、二人分のご飯を作った台所の情景が重なった。ああ、ご飯一緒に作ったこともあったよね。
手を繋いで歩いた町並み、一泊二日で旅行したこと、……「好きだよ」って言ったら、「嬉しいです」って返してくれた時の、あのまぶしい笑顔。
僕ら二人で積み重ねた思い出が、次々に浮かんでは消えていく。
そういうの、確か走馬灯のようだ、と言うんだったっけ。
ああ、そっか。
今、僕の恋が、死んだ。