Nikki, SS

【企画参加】ミラニキ暗黒童話

りぃさま(@rii_nikki_2)の企画「暗黒童話」に参加したものです。


うそ、なんで、どうして。
礼を言おう、愚かな人の子。
どこで間違えたの?こんな、こんな——
その傲慢な知識欲が妾を喚び寄せた。
違う、私が喚びたかったのは、こんな
妾を喚び出したこと、名誉に思うが良い。
悪魔なんかじゃなかったのに——!
なに、命までは取らぬ。その体、妾が使ってやろう。
痛い、やめて、やめて!
ほうら、痛かろう。
頭が割れちゃう!背中が裂けちゃう!
もう角も翼も生えてしまったぞ?
なんで、なんでこうなったの?
抗うことは叶わぬ。思考など無意味。
いやだ…私の体、私の体、なのに…!
何、心配などせずとも良い。
やだやだ、だれか、
大人しく妾にそなたの体を明け渡すが良い。
だれか、助け——
そら——もう遅い!

——久方ぶりの人の体も悪くないものよ。
さて、先ずは腹を満たさねばなるまい。
喜べ、人の子。妾に体を差し出した褒美である。親の血肉を味わう甘美をまず教えてやろう。


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Nikki, SS

【企画参加】祈りの星の物語

猫おやぢさま(@popokiuncle)の企画「祈りの星の物語」に参加したものです。


ひらひら、きらり

Puleの目の端に、きらりと何かが映りました。でも、Puleがそちらを向いても光るものなどありません。
と、また、きらり。
Puleは辺りを見回します。
「星屑、だね」
白うさぎは指さします。
ひらり、ひら、ひら。
小さな星のかけらが、ふわりと舞いながらPuleの横を足下の青い星へと落ちて行くのです。そして、しばらく舞い落ちた星屑は突然きらりと輝き、消えました。
気づいてみれば、そこかしこで星屑たちが花のように舞い落ち、その身が焼き尽くされる瞬間にきらりと光っていました。
「あれも、君の輝き?」
白うさぎは尋ねます。
あれが、あれも、私の輝き?

それは、命の輝き。命そのもの。
星屑たちの命が燃え尽きる瞬間に輝く、美しい光。
その強さに、その儚さに、その美しさに、Puleは涙を流します。——あんな美しさを、私も持っているかしら?

Puleは目の前を舞った小さな小さな星屑を両手で受け止めると、ぎゅっと抱きしめました。
その時感じた暖かさを、きっとPuleは忘れないでしょう。
命あるものの輝きを、こうしてPuleは知ったのでした。


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【企画参加】Battle of Fairy Tales

甘星めるあさま(@merua___niki)の企画「Battle of Fairy Tales」に参加したものです。


百鬼夜行

わたし、欠陥品なんだって。
ずーっとそう言われて育ってきた。
わたし、欠陥品なんだって。
だからずーっと鎖に繋がれてた。

うちはね、一族みーんな、「慈愛にみちていて」「正しいことをして」いるんだって。
でもね、わたし、欠陥品だから。
それがどういうことか、わからないの。

あはは、でもほら、見て、見て!これからはわたしが正しいの!
慈愛?正義?それで編まれた鎖が何の役に立つっていうの?ほら、こんなに簡単に千切れちゃった。

あははは、これからはわたしが正義!
みーんな、嬲って、千切って、切り刻んであげる。


落花

やだ。やだやだ。こんなのってない。
儚い花の精は泣きながら逃げる。

いきなり殺し合いを迫られた。やらなければ首が締まるのだと。
だから少女は逃げた。
どこか遠くへ。どこでもいいから、この呪いが効かない場所へ。

とめどなく溢れる涙でもう前も見えない。それでもがむしゃらに前に進んで——ふと気づくとそこは、不気味な森の中。
少女は気付く。私はここで死んでいくのだ。
蜘蛛の巣が少女を締め上げ、真白な骸骨の手が少女を引きずり倒そうとする。

ああ、どうして——
あと少し、早く生まれていたら。そうすれば、静かに安らかに散っていけただろうに。

森が少女を喰らうのが先か。
血のような赤い鎖が少女の首を握りつぶすのが先か。

少女は薄れゆく意識の中で、精一杯に手を伸ばす。せめてもの希望を、最後に残った自身の花を風に乗せて飛ばすように。


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【企画参加】人外ニキ

鈴木さま(@renka_nikki)の企画「人外ニキ」に参加したもの。


Bringer of Summer

それは、果てを知らないあの青空。
輝き渡るあの白い雲。
この世のいのちを集めたようなあの強い日差し。
それを受けて煌めく木々のあの緑。
空を映した深く明るいあの海。
暑く、それでいて爽やかに吹き抜けるあの風。
——彼女は夏をもたらすもの。

それは、火照った大地を鎮めるあの雨。
気だるい暑さの名残を残すあの夕暮れ。
暮れない昼に忍び来るあの夜の帳。
高い空に輝きを競うあの星々。
いのちに溢れる1日を労うあの潮騒。
束の間の休息を見守るあの細い月。
彼女は夏の妖精。夏をもたらすもの。

水と氷のオルゴール

彼女は愛の曲を奏でるよう作られた。大切に作られ、大切に飾られ、それ故に彼女は心を持った。
彼女の心にあるのは、愛、ただそれだけ。
彼女が自身を自覚してから幾星霜。彼女は今も、独りで愛の曲を奏で続ける。
愛しか知らぬ彼女の心は、求めども求めども与えられぬ愛に熱い涙を零す。とめどなく溢れる涙は台座を滑り落ち、彼女の周りを水で満たしていく。しかし、愛しか知らぬ故に愛を理解できぬ彼女の心は凍てついていて、零れ落ちた涙はその冷気に美しい結晶となって凍ってゆく。
彼女は愛の曲を奏でるよう作られた。過去から現在、未来まで、彼女は永劫、愛の曲を奏で続ける。


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【企画参加】OCVnikki / OCHnikki

いせさま(@i_se_nk)の企画「OCVnikki」「OCHnikki」に参加したものです。


語られるべき英雄譚

「世界が私を不要とするなら、そうなのでしょう。でも私は止まれない。信じたものを簡単に捨ててしまえるほど、私はできた人間じゃない。
——私を止めるのが、貴方でよかった。」
「貴女の想いは尊いものだった。そのやり方が違う道だっただけで、貴女の想いは僕と同じだ。
——世界が貴女を貶めようと、僕だけは、貴女の想いを覚えておく。誰よりも優しい貴女の記憶だ。」

彼には彼の正義があり、彼女には彼女の正義があった——ただ、彼と彼女の正義は相容れず、彼女の正義が世界にとっての敵であった、それだけ。

互いの信念はよく理解できている。同じ学び舎で姉弟のように育ったのだから。
しかしいつしか、彼と彼女の道は分かたれてしまった。

この苦しみに満ちた世界を救う為に、彼女は世界を一新しようとした。
この世の理不尽を嘆き、救う術を模索し続けていたあの優しい女性を、彼はずっとそばで見てきた。その彼女が最後に出した答えが、世界の一新だった。神になりたかったわけではない。むしろ、世界を救えるのならば自分の命など投げ出しても良いと微笑みながら語っていた。世界に蔓延る理不尽を、嘆きを、痛みを取り払いたいのだと。

彼には彼女の思いが痛いほど理解できた。彼だって、彼女と同じようにこの世の理不尽を嘆いていたから。
しかし彼は、この苦悩や嘆きを受け入れてこそ、真の充足がもたらされるのだと信じた。全ての嘆きや苦悩をなくした世の中では、なにが幸福でなにが安らぎなのかすら分からないではないか、と。

そして二人は袂を別つ。

やがて彼女は、世界中から魔女の烙印を押されることとなった。
世界の一新、それは今ある世界を破壊することと同義であったからだ。世界を破滅させようとする悪。彼女は彼女の正義と信念を貫こうとしたが故に、世界から許されざる存在となってしまった。
彼女の正義を世界は悪と断じ、彼の正義を世界は善とした。

男はその信念により、英雄として今あるがままの世界を守る役目を負う。
もはや対話の時は過ぎた。どちらの正義も、どちらの信念も正しいのならば、対話など最初から意味を成さなかったのだ。

大義の旗を掲げ、英雄はあの魔女を倒すだろう。名もなき人々が、世界中全ての人々がそれを望んでいる。全ての人々の望みを背負い、英雄は義姉とも慕った女を討つ。誰よりも世界を想い、人々の為に全てを捨ててきた彼女を。
英雄の苦悩も、魔女の嘆きも、世界は知らない。いや、知られるべきではない。

語り継がれるべきは、偉大なる英雄が巨悪を倒す、光輝と栄誉に満ちた英雄譚なのだ。


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Nikki, SS

最後の旅

月明かりで目が覚めた。
これまでにないほど気分が良く、なにより体が軽い。
思わずベッドから降りて窓辺へと歩み寄る。幼い頃から病弱で、ほとんどベッドから出たこともない、ましてやまともに歩けたことなど皆無に等しいというのに。——特に昨日など、意識すら保っていられないほど状態が悪かったというのに。

月明かりに照らされた屋敷の外は、彼女の知っている庭とは全く違っていて——そこにあったのは、一面の静かな花畑。確かにそこにあるのに、瞬きをするとふわりと消えてしまいそうな花々だった。
急いでクローゼットを開け、外に出られる服を探す。あの美しい花畑に、まさか寝間着のまま足を踏み入れるわけにもいかない。しかし出てくるのは、今彼女が身につけているのと同じような服ばかり。それもそうだ、だって彼女が今までどこかに出かけられたことなどないのだから。
それでもようやく、クローゼットの1番奥からよそ行きのドレスや帽子、靴なんかを見つけ出し、精一杯にめかしこむ。
十数年を経てようやくその役目を果たした姿見の前に立ち、彼女はくるりと一回転した。大丈夫、歩ける。それどころか走り出せそうなくらい。

部屋のドアをそっと開け、寝静まった屋敷の廊下を進む。玄関にたどり着き、外へ通じる扉を開くと、あまりの明るさに目が眩んだ。月明かりと、それを受けて輝く花々のせいだ。
ふと扉のそばに目をやると、黒い日傘が立て掛けてある。彼女の出で立ちに良く合った、美しい傘だ。
ちょうど良いわ。彼女は迷わずそれを手に取り、優雅な仕草で傘を開いた。
それにしてもこの日傘、いつか窓から見たお葬式で女性たちが差していたものがこんな感じだったわ。誰かのお葬式でもあったのかしら。
ちらりとよぎった考えは、しかしすぐに消えた。花畑への一歩を踏み出した時、彼女の足の先に花々で彩られた階段が現れたからだ。
階段は霞を集めたように透きとおり、淡い光を放つ。その先には明るい三日月が見えた。

迎えが来たのだと、彼女は気づく。この階段を登れば、もう戻っては来られないだろうと、彼女の感覚が告げている。

幼い頃から、そう遠くない未来にこの時が来ることは覚悟していた。まだ少女と呼ばれる年齢を脱してもいないのに、彼女は覚悟してしまっていた。
だから、彼女は自分に心残りなどない。

一度だけ屋敷を振り返り、穏やかな微笑みを湛えた少女は、軽やかな足取りで階段を登り始めた。


データをなくしてしまったので画像はありません。


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Nikki, SS

【企画参加】マーベルカラフルウィッチ

みおさま(@mxideal)の企画「マーベルカラフルウィッチ」に参加させていただいたもの。


生は死、死は生。

とこしえに繰り返すこの円環を見守る、彼女もまたとこしえの存在でした。

白と黒、彼女がこの色を選んだとき、彼女の役目は定まりました。とこしえに留まることになったのも、このときからです。

彼女の蒼の瞳は生者の道行きを祝福し、紅の瞳から落ちる涙は花弁となって死者を悼みます。

全てを洗い流す雨が止むことはなく、花は咲いたそばから散り、散ったそばから花開いていきます。白い羽と黒い羽、雨と花弁の舞い散るこの世の狭間に、彼女は静かに佇んでいるのです。


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Nikki, SS

払暁、覇業の刻

風向きが変わった。

暁風は冷え冷えと吹きつけ、女の髪を乱す。

——もう、直ぐ。

女は白みゆく東の空を見つめ、弓を握る手に力を込めた。

後背に控えるは彼女を盟主と戴く一千騎。何れ劣らぬ強者揃いだ。

彼らは女が進軍の命を下すのを待ち構えている。一度彼女が号令を発すれば、彼らはたちどころに怨敵を討ち滅ぼす千騎の暴風となるだろう。

全てが息を止めるような一瞬。

そして一条の金色が、この日の最初の光が女を照らす。

女は光に向かって顔を上げた。光に向かい、いっそ傲然ともいえるその様は、まさに王たるにふさわしい覇気を纏っている。

瑞雲がたなびき、世界が動き出す。

払暁、覇業の刻は、いま。


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